合浦公園での目覚め。例によってAM5:30にはテント撤収を完了させる。
朝食を公園内でとっていると雨がぽつりぽつりと降ってくる。早く出ようと思う。
7日目
AM6:00頃には出発。今日はむつ市に着くだけが目標。ちょうど100km程の道のり。
浅虫温泉を過ぎたあたり、雨はどんどんと強くなる。安い雨合羽には外から雨が浸入し、服の中は暑さで蒸れる。ゴアテックスのマウンテンブーツもぐっしょり。苦しい道のり。
歴史には疎いけれど、いまの平和な時代の県境とは持つ意味も全く違ったんだろうなぁ。藩と藩を自由に往来出来なかった時代。ここは「国境」だった訳だ。
一旦雨は小康を得た。しばし休憩。
243号線を経て279号線(はまなすライン)に入る。雨はもう再開していたけれど、横浜町まであと少しというところでまた土砂降りに曝される。道端のラーメン屋の入り口で雨宿り。ビールケースに座り込んでいたら、店のおばちゃんに邪魔だからすぐ向いにあるバス停へ行ってと促される。
4畳半ほどのバス停で自転車ごと雨宿り。雨は更に強まり、ついには滝のように。
「最悪このままここで1日過ごすかもなぁ」と考える。
30分ほどうとうとしていたら雨はあっさりとあがった。意外と早かった。
やはり、自分はついている。神は見捨てていなかった。お天道様!
心のなかで快哉を叫びながらまた走り始める。
コンビニで買った昼食を「道の駅 よこはま」で食う。
PM3:00前には下北駅に到着した。本州最北の駅(その割には、ほとんどアピールしてなかったけど)
時間に余裕があれば、尻屋崎へ寒立馬を見に行こうと思っていたけれど、断念。
無沙汰なので、下北の街を自転車で散策する。街にはマクドナルドもすき家もあって、意外と若い人間も多い。というか、若い人間がそういうチェーン店に集まって来ているだけだろうか。
よくある小さな地方都市で、少なくとも勝手に予想していた"辺境感"は全く無かった。
すき家で大盛牛丼を食べ(久しぶりの味…旨かった…)、「むつ運動公園」へ向かった。
風の避けられそうなよいベンチを見つけ荷を降ろしてくつろいでいたら、そばの野球場に続々と車が集まって来た。仕事終わりのオジサン野球チームらしい。
しかたなく少し場所を移動してテントを張る。
日が落ちる。真っ暗な恐山の麓。風が轟々とものすごい音を立ててテントを揺する。
ペグは2本ずつ打ったのだけれど、それでもテントが吹き飛びそうな凄まじい風。
なんだか頭痛がしてくる…恐山の呪い!?
そういえば、轟々という風もなんだか恐山からの死者たちの叫びに感じられる…
・走行時間 5h07m45s
・走行距離 98.99km
・積算距離 653.2km
8日目
AM2:30、テントを揺らす轟音に目を覚ます。
昨日の天気予報だと今日は曇のち雨。テントの外へ手を伸ばすと、どうやらまだ雨は降っていない。
「まだ暗いけど、このチャンスを逃す手はない」と思い、暗闇の中でテントを撤収。
風が避けられる場所にあるベンチに移動。朝食を食ったりしながら夜明けを待ち、AM5:00。夜明けとともに恐山へ向けて出発。
県道4号を行く。
事前にかなりキツいと調べていた上り坂。15キロほどだったろうか。
始めの半分ほどは傾斜も緩やかで、言うほどでもないという感。
しかし、後半からがキツかった。
気が狂ってるとしか思えない2桁パーセンテージの勾配が連続。1つ急坂越えてハァーハァー。また1つ急坂越えてハァーハァー。重い荷物を背負っての急坂は、とにかく瞬発力が必要だった。
恐山冷水で喉を潤すとまもなく、カルデラ内に入り一転道は急な下りに。
一気に駆け降りると、宇曽利湖に着いた。
小雨の中、霧に霞む宇曽利湖には虹が薄っすらとかかっていた(結構貴重?)。湖面はスカイブルーの色をしている。
ここは確かに地獄だけれど、同時に天国のように美しくも見えた。
三途の川を渡って菩提寺へ。
開門直後なので殆ど人は見られない。
なんとも不思議な雰囲気。強風、カラカラと回る風車、立ち込める硫黄の臭い。
重苦しい。それでいて、対照的にあまりに美しい宇曽利湖の青。
参道すぐ脇には秘湯感漂う無料の温泉があった(薬師の湯)。
ほかにも菩提寺の中には幾つか湯があるらしい。
故人を弔うためだろうか、石に名を刻んで積み重ねられたものが至る所にある。大切な人を亡くした人達が、ここへ故人に会いに来るのだろうか。
東京も北京もニューヨークも、どんな美しい世界遺産も全部"此岸"だけれど、ここだけは"彼岸"。肉界にあって、最も霊界に近い場所。三途の川を渡って、故人の側へ来れる場所。正に霊場。
菩提寺を出て、ちゃんと三途の川を渡って戻って来た。
カルデラを今度は登ると、行きとは対照的に20kmほどの下り道。めちゃくちゃ気持ち良い。
下り終わると大畑へ出て、279号線に合流。「大間崎」まであと少しだ。
コンビニが全くなかったので厳しかったけれど、気力で頑張る。
あと15km、あと10kmとこまめに休みながら…ようやく大間崎に着いた。
北海道は目と鼻の先。
"本州最北の地"の印のところにいた自転車旅の二人組に声を掛けると、彼らは親切にも写真を撮ってくれた。今度は自分が別の夫婦にお願いされ写真を取る。
そんなこんなで、しばらくあたりをブラブラとして、何軒もある観光客向けのお店を「値段が高いなぁ」と思いながら目で流していると、一軒の店のおっちゃんが声を掛けてきた。
おすすめだというタコの頭の網焼きを食う。
外は焼けてカリカリで、中は半生で弾力がある。確かに旨い。
と、隣に居たのは先程自分に写真を頼んできた夫婦だった。どうやら愛知県から車で来たらしい。夫婦は「大間まぐろ」を食べていた。
営業慣れした店主のおっちゃんは、自分にも「昼飯に大間まぐろどうだ?」と勧めてくる。「お金が無いので昼食はコンビニで…」とやんわりと断っていると、なんと隣の夫婦が「大間まぐろ」を奢ってくれた。神!
大間まぐろの大トロに舌鼓を打つ。大間に来たんだから食べたいとは思っていたけれど、まさか奢っていただけるとは…。感謝感謝。
大間崎テントサイトは岬からすぐ、というか岬のところにある。立派な炊事場も自由に使えて無料というから素晴らしい。皆さんのマナーの賜物。
テントを張って荷物を置いてから、海峡保養センターへ向かい三日ぶりに湯に浸かった。本州で積もってきた疲れが少しは癒えただろうか。
テントサイトに戻って自転車にオイルを差していると、さっき"本州最北の地"の印のとこに居た二人の内の一人と再会した。彼も今日はここにテントを張るという。やけに若く見えると思って歳を聞いてみると、なんとまだ高校1年生。横浜から一人で自転車旅をしている、と。
飯を食いながら語らって、唐揚げを分けてあげる。人にされた恩を、今度は自分はしてやる番。(年下だし。たかが唐揚げだけども)
テントに戻ってから一人でワンカップを飲む。今日はテントサイトなので、周りを気にせずぐっすり眠れる。
明日からはいよいよ北海道だ。さらば本州。
・走行時間 4h23m31s
・走行距離 74.31km
・積算距離 727.6km